‐将来はプロサッカー選手になりたい。
‐環境の整った日本で自分を成長させたい。
2021年6月現在、18人の台湾人高校生が各地で切磋琢磨している。
彼らはなぜ故郷を離れ、海を渡り、日本へのサッカー留学を選んだのだろうか?
とりわけ大きな理由として、台湾の高校サッカーを取り巻く環境が挙げられる。
まず、高校のチーム数が圧倒的に少ない。その数、たった「28チーム(日本は3,966チーム)」
近年育成年代の競技人口が増加している台湾サッカーにおいて、高校までサッカーを続ける選手は少なく、
これは中学・高校進学時での勉学へのシフトと学校チームのみ公式戦がある環境並びにスポーツ班(1)制度に理由がある。
また、都市に1‐2チームしかないため、越境して交流をせざるを得ない状況にあり、交流も盛んではない。
つぎに、チーム数と比例して、公式戦(練習試合含む)が圧倒的に少ない。全国優勝するチームで年間約40試合程度。
年1回の全国大会(優勝チームで10数試合)、各地域の地方大会1回、その他小規模の招待大会など。
また、強度の高いチーム数が限られ、ほぼ同じチームが全国大会上位に名を連ねている。
ちなみに日本の一般的な高校チームで年間約60-90試合。
以上の理由から、自分の夢と目標を叶えるために、サッカー留学を選択したと考えらえる。
では、なぜ留学先が「日本」なのか?
歴史的、文化的、地理的な理由以外に「台湾にいた日本人指導者」が、その答えになる。
2012年から2017年まで、中華民国サッカー協会に在籍していた「黒田和生(2)」氏のことを忘れてはならない。
日本サッカー協会からの派遣で、ユース育成統括をはじめA代表監督まで務めた黒田氏は在任期間中に
年齢を問わず、多くの台湾人選手を日本サッカーに触れる橋渡し役を担った。また、黒田氏が台湾にいる
という理由で日本全国から台湾にサッカーキャンプを行う事例が多数見られた。
現在の留学先も、直接又は間接的に、黒田氏の縁から生まれたといっても過言ではない。
特に新潟県の開志国際高校、千葉県の暁星国際高校、兵庫県の蒼開高校などは黒田氏との関係が深い。
以上、台湾人高校生のサッカー留学の主な理由を探ってみた。
当然上記以外の理由もあると思われるが、17人の多くは当てはまるのではないかと思う。
異国の地で奮闘している18人の台湾人選手。
高校サッカー選手権大会県予選準決勝でゴールを奪う選手、Jリーグ下部組織で登録・出場する選手も出てきており、
台湾人選手が日本サッカーでも適応できることを証明しつつある。
今後も18人の動向に目が離せない。
(1)スポーツ班
スポーツ班とは、各学校が推進する種目に、スポーツテストで合格した生徒のみが通えるクラス。
お昼過ぎまで普通教科を行い、それ以降は各種目の練習時間にあてられる。
日本の高体連中体連にあたる「高中體總」が主催する大会が年に1回開催される。
その成績により大学進学時のスポーツテストでの加点が設けられる仕組みになっている。
スポーツを以て進学を検討している選手は自ずとスポーツ班にチャレンジする。
スポーツ班に進学しない選手は必然的にその競技を続けない、または余暇で楽しむ程度となる。
(2)黒田和生
日本高校サッカー界の名将のひとり。
兵庫県滝川第二高校の元監督。全国高校サッカー選手権への出場、全日本ユース選手権優勝(2005年)など輝かしい実績を残す。
岡崎慎司、金崎夢生、加地亮、波戸康広など多くのプロサッカー選手、指導者を輩出。